■『引退』の決断 今年の2月上旬、ガンバ大阪が二次キャンプを行っていた宮崎県東諸郡綾町。選手が汗を流すグラウンドの隅で、どことなく所在なさげに練習を見守っている男がいた。昨シーズン限りでの現役引退を決めた山口智だ。かつて01~11年までガンバ大阪に在籍し、数々のタイトル獲得に貢献してきた彼は、5年ぶりに戻った古巣で強化部に属し、新たなサッカー人生のスタートを切っていた。 「いまはまだ正直、落ち着かないです(笑)。せっかくこうしてキャンプに帯同させてもらっているので、練習を含めて、いろんなものを見て、感じようというのが精一杯。選手時代もそうであったように『ガンバを強くするために』という思いで仕事に就きましたが、正直、自分に何ができるのか…というより今はまだ何もできないというのが現実です。僕は20年の現役生活で、一度も代理人をつけたことがなく、その分、毎年、所属チームとの契約交渉は自分で行って