輸出メーカーの工場が林立し「世界の工場」と呼ばれる中国南部の珠江デルタ地区。その真ん中にある広東省東莞市は、金融危機による世界的な景気後退の衝撃をまともに受けた。東莞の地名は知らなくても、閉鎖された工場や故郷に帰る出稼ぎ労働者のニュース映像を覚えている読者は多いだろう。 世界景気に底打ちの兆しが見え始めた今、「世界の工場」はどうなっているのだろうか。東莞市副市長の江凌氏は、1990年代初期から外資企業の誘致や投資環境整備の現場を奔走し、珠江デルタの裏表を知り尽くしている。いわば“世界の工場の総務部長”と言える人物だ。 江氏の目に、金融危機の現場はどう映ったのか。珠江デルタの現状と将来を聞いた。 ―― 輸出企業が集中する東莞市は、中国で金融危機の打撃が最も大きい都市としてメディアの注目を浴びました。リーマン・ショックから9カ月余りが過ぎましたが、危機に対する見方はどのように変わりましたか。