『わが告白』とは強い印象のタイトルで、いったい著者はどんな人でどんな罪を犯したんだろう、と考えてしまう。読み進むと、その年齢が八十代であることがわかる。彼は宮内庁御用掛、歌会始選者、日本芸術院会員、つまり歌人としての最高の地位を極めた人間である。その一方、元医師であり、元大学教授であり、過去に焼夷弾による負傷、キリスト教の受洗、革命運動への参加などの経験があるようだ。人生のなかで思想的に左から右へシフトしたことがみてとれる。 また、現在の妻との間の年齢差が三十二歳ある。六十一歳のときに二十九歳の彼女と知り合って恋に落ちたらしい。そのとき、彼には妻と三人の子供があった。その前にも別の妻と子供がいた。さらに前にもまた別の妻と子供がいた。つまり、三度にわたって妻子を捨てた経験を持っているわけだ。彼はこれを一種の罪と考えている。「わが告白」とは、つまり、その体験に関わるタイトルであるらしい。 それ