おおたに・ゆか氏=1978年、香川県生まれ。龍谷大文学研究科博士課程単位取得退学、博士(文学)。龍谷大特任准教授。東アジアの仏教戒律思想の変遷を専門とする。著書に『中世後期泉涌寺の研究』、論文に「越境する戒律問答」など。※経歴は応募時点 仏教では一般に「不殺生」を説く。律蔵においては教団追放となる重罪である波羅夷の第三に立項されて殺人が禁止されているし、多くの菩薩戒の中にも殺生を禁ずる項目が立てられている。自死はこの不殺生に抵触する行為であり、仏教では自死を禁じているとしばしば説かれる。 しかし戒律での禁止事項として挙げられる不殺生は、基本的に他の命を殺すことを誡めるものであり、所謂自死の行為がこれらの誡めの対象となっているのかどうかは曖昧である。李薇氏は律蔵の記述から自死について論じる先行研究を総括し、先行研究には仏教は自死を「罪ではない」と結論づけるものと、「罪である」と結論づけるもの