「検閲」に揺れた2017年。ニューヨークのアートシーンを振り返る2017年1月のトランプ政権発足後、アメリカでは人種・文化・宗教・ジェンダーを巡る衝突がより顕在化し、異なる意見を受け入れる寛容さが急速に失われつつある。アートの世界では「検閲」というかたちで、この状況を目にすることが多くなった。本記事では、「検閲」という観点から、2017年ニューヨークで論議を呼んだ展示を振り返る。 文=國上直子 ペン・ユー、スン・ユアン ドッグス・ザット・キャンノット・タッチ・イーチ・アザー 2003 Courtesy of Peng Yu and Sun Yuan 既にウェブ版「美術手帖」では、ホイットニー・バイエニアルで展示されたダナ・シュッツの作品に関する問題と、メトロポリタン美術館に常設されるバルテュスの絵に対する抗議活動をレポートしたが、今年「検閲」の対象となったのはこれらの展示だけではなかった。