あちこちで書いたことだが、小学校時代、本をほとんど読まない子どもだった。だからこの本のなかで取りあげられている15篇のなかで、子どものころ(子ども向けに書き換えたものも含め)読んだものは1篇もない(ドーデの「最後の授業」は英語で書き換えたものが中学校の英語教科書に載っていたかもしれない)。というかいままでに読んだことがあるのも3分の1程度じゃないだろうか。 でも話をどこかで小耳に挟んだり、アニメ化されたのを断片的に観たりしたことはあるので、どれもそれなりに話の内容だけはぼんやりとわかった気になっていたのだが、本書は『フランダースの犬』や『若草物語』『宝島』など「知った気になっている」コンテンツの背景を、「経済」「国家」「アイデンティティ」といったアングルから大人の視線でさぐっている。 と書くと一時へんに流行した文化研究(カルチュラルスタディーズ)みたいな感じだが、さすが『日本SF精神史』の