部長が「超大型契約が取れた、詳細を詰めるので書記として同行しろ」と言うからついてきたのに「契約は同業他社に持っていかれた、俺は後学のために真意を質す姿をお前に見せてやる」とまったく違う話をしてきたのは新幹線がイイ感じに加速をはじめたあと。一人で行ってくださいよ、文句を言いたくなったが部長が窓から外を眺めて川を渡るたびに「ワオ富士川だああ」と騒ぐのをみて、なんだか悲しくなってきて、己の品性も引き摺られて墜ちてしまう気がして、やめた。 富士川を五回ほど渡って目的の会社。額が張り出していてポカホンタス似の担当者は僕らを応接ルームに通すと、「少々…お待ち…ください」と言い残して消えた。「土人みてえな顔で寒い部屋に通しやがって」部長が毒を吐く。「見てろ…これからヤツを締め上げてやる。」何をしに来たのかまったくわからず、はあ、気のない返事をすると、背中から「フッ…業だな。こういう使えねえ烏合の衆を束ね