今日の部長の笑顔は、アメリカ大統領選挙における演説集会で同じTシャツを着て大統領候補のうしろに並んでいる支持者が浮かべる胡散臭いスマイルを連想させた。夕刻。営業会議。ゴルフ焼けで黒光りする部長が、くわっ、と目を見開いた。会議室の重苦しい空気をソーラーレイのごとく切り裂いて部長が叫ぶ。「こんな簡単なことが解決できないのカァ〜」。ペッ。絡んだ痰をハンカチに吐いた勢いそのまま今月中途入社してきたサオリちゃん(男性/独身/51才)に突っかかっていった。 「ペッ!サオリ営業IN…俺が言っているこたぁそんなに難しいか…何で黙ってる…」。部長の『営業員』はなぜか巻き舌。外人みたい。「私は…」「サオリ営業IN!サオリ営業IN!今は俺が先攻している番だ。出来る営業マンは攻守をわきまえる…ビジターの読売ジャイアンツは常に先攻…サオリ営業INはまだ二軍…試用期間だったな…」部長がサオリちゃんをスポイルしてる様を