寝台では浅く眠っただけだった。起きるとそこは横浜駅を発車したばかりで、車内は人々がまばらに朝の眠気を横たえていた。 金曜、仕事が定時を少し回って終わった。 エンジニアとして現場研修をしている私は、帰路につくためバスから電車へと乗り換える赤羽駅にいた。 ――どこか遠くへ行きたい。 そう思いたち、改札を抜ける前にみどりの窓口へと向かった。 「22時東京発、寝台券はまだありますか」 用意されたのは、琴平行きの座席特急券。それを手にしたあと、大宮にある自宅へ一旦戻って、身支度を始めた。 最低限の替えの着替えと、歯ブラシ、タオル、文庫本をリュックサックへ突っ込み、口座から少しだけ金を引き出し、気付くと東京駅9番線ホームでサンライズ瀬戸を待っていた。 人生初の寝台列車だ。 入線してきた赤色と薄茶色の車体に乗り込み、間もなく発車したサンライズ瀬戸号の車窓へ目を向ける。 通過する品川駅にはまだ多くの通勤客