七尾北湾沿いを軽快に走るのと鉄道。遠方に見えるのは能登島。全線が世界農業遺産「能登の里山里海」の域内だ(写真は西岸駅―能登鹿島駅間) のと鉄道は2001年に穴水(あなみず)―輪島駅間を、05年に穴水―蛸島(たこじま)駅間を廃線にした。レールや枕木は跡形もなく撤去され、奥能登から鉄道の灯(ひ)が消えた。残された七尾―穴水駅間の8駅33.1キロは、廃線前の3分の1以下の長さとなった。 「高校の鉄道同好会で、のと鉄道を応援する冊子を作り、社会人になってからは2冊自費出版もしました。02年にこの会社の運転士になりましたが、穴水―蛸島駅間の最後の運転を私が任されたのです。悔しさ半分、情けなさ半分でマスコン(制御器)を握ったことが忘れられません」 同社公認のブログ「のと鉄道運転士の乗務日誌」を7年書き続けている石川県珠洲(すず)市出身の巽(たつみ)好弘(49)は、当時を思い返して言う。 のと鉄道の社長