「殺された弟と母のかたきを討ちに行く。殺されようがかまわない」 こう言い残してウクライナに向かった1人のシリア人傭兵。 彼を戦場へと駆り立てたのは、祖国の内戦に介入し、家族を奪ったロシア軍への復讐心だった。憎しみの果てにたどりついた戦地で、彼が見たものとは。 (イスタンブール支局長 佐野圭崇) 家族はロシア軍に殺された 中東シリアの北部にある小さな町の墓地。 その片隅にウクライナで戦った1人の傭兵が眠っている。 アブドゥルラフマン・アフマド。 28歳だった。 生前、ウクライナへ向かう理由について、こう答えていた。 アブドゥルラフマン・アフマド 10年以上にわたって内戦が続くシリア。 内戦前に死別した弁護士の父の背中を追い、大学で法律を学んでいたアブドゥルラフマン。 その夢は、内戦であっけなく壊された。 反政府勢力に身を投じ、アサド政権と戦ってきたが、5年前、政権側を支援するロシア軍の空爆で