「恋人ができたんです」 そう、嬉しげに後輩が休憩室で耳打ちをしてくれた。仲良くしていた後輩の浮いた話に思わず笑みが溢れた。 「増田さんの知ってる人ですよ、わかりますか?」 頭の中でその後輩と関わりがある、自分と仲良くしている同僚と、違うフロアで働いている後輩の同期の顔を浮かべた。 どちらも可能性があるような、ないような。 もし仲良くしている同僚ならばそちらから聞かされていなかったのでショックだなあ、なんて思いながら、わからないと、素直に首を振った。博打はするものじゃないから。 じいっと後輩の顔を見るとにこにこと嬉しげな表情を隠さずにしている。早く答えが知りたい。 「実は、増田さんが担当していた、こないだ退院したあの人なんです」 頭の中が真っ白になる感覚を覚えた。目の前の後輩がなにを言っているかわからない。 ――ここは、病院の休憩室である。 つまりは、この後輩はこの間まで入院していた患者に手