行きつけの蕎麦店は、昼食をとる男性たちで溢れている。そのうち半分くらいは一人で来ている客だ。中田堅司課長もこうして一人黙々と、きつね蕎麦をすすっている。 さっき、元部下のA君がうつで休職しているという話を耳にした。まだ独身で地方から上京しているという彼。実家には帰らず自宅療養を続けているそうだが、生活の面倒は誰が見ているのだろう。万が一、自殺願望に駆られたとき、止めてくれる人はいるのだろうか? あいつも、休職する前はこうして一人で昼食をとっていたのかな――黙々と食事する男たちを見ながら、ふと中田課長は不安に駆られた。 心の病にとりつかれても、本人自身はなかなか自覚できないという。とはいえ、仕事中はパーテーションで区切られたデスクに座ったきりで、他人の顔色などわからない。日頃一緒に食事する仲間なら異変をキャッチできるかもしれないが、あいにくたいていはひとりだ。家族とじっくり顔を合わせる時間も
「ワーク・ライフバランス」代表の小室淑恵さんは、育児や介護などで会社を休職している人のためのオンラインサービスを提供している。ネットを使って休業者と上司のコミュニケーションを促進するには、ちょっとした秘訣があるそうだ。 現在30歳前後となる就職氷河期世代は、不況の影響で正社員採用が絞りこまれていた世代で、長時間労働やメンタルヘルスについて悩みを持つ人が多い。「仕事と生活のバランス」について考えている人は多いだろう。特に女性の場合は、出産するかしないか、出産したら育児と仕事を両立できるか、悩みは尽きない。現在は仕事一筋の男性でも、家族と接する時間をもっと増やしたいと思ったり、育児休業の取得を検討している人もいるだろう。 小室淑恵(よしえ)さんは、就職氷河期世代の1975年生まれで、その名もずばり「ワーク・ライフバランス」という名前の企業の代表だ。1999年に資生堂に入社し、2000年に入社2
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