反出生主義は哲学的論理の一つであり、善し悪しで評価できるものではありません。ただし、「すべての人が存在しない世界こそあるべき姿」という考えを乗り越えようとするならば、私たちはどのような論理で対抗し得るでしょうか。 香山リカさん(左)、森岡正博さん 人の役に立つ人生でなければならないのか 森岡正博(以下「森岡」) 前編では、反出生主義に対してどちらかというと批判的な観点から議論してきたと思うのですが、一方で私自身の中にも反出生主義はあると感じることがあります。 香山リカ(以下「香山」) それは、「生まれてくるべきではなかった」ということですか? それとも「子どもを産むべきではない」? 森岡 私個人の場合は、「生まれてくるべきではなかった」という、誕生否定のほうが大きいですね。 香山 社会的にはこんなに認められている森岡さんにして。それは、どういう理由でなのでしょうか。 森岡 一つは、人は生ま