不思議なことは、昼間はそっけない猫が夜中に会ったときだけ猛烈にすり寄ってくることです。日のあるうちは、まったくつれないくせに、丑三つ時の大歓迎ぶりは、たいへんなものです。今生の別れから、奇跡の再会を果たしたような切実さで耳のうしろをわたしの顔面になすりつけて、肩をあまく噛み、何往復でもすり寄って、濁点まじりの甘えた声でなきます。ほんとうに、ふだんは私の姿をみるだけでも、走って逃げるくらいなので、「うれしい」どころじゃとても片づけられない、もうこの瞬間のために生きていると言い切っていいくらい、わたしの幸せは真夜中のねこにゆだねられています。