「なんとしても燃料棒冷やして」 東日本大震災から11日で1カ月となる現在も収束のめどすらたたない東京電力福島第1原子力発電所。すべては原発の安全の生命線である「水」が失われたことから始まった。 「2号機の原子炉に注水ができなくなっています」 3月11日午後2時46分の地震発生から6時間後。政府の原子力災害対策本部で、現地からの報告を聞いた原子力安全委員長の班目(まだらめ)春樹は、背筋が凍り付く思いがした。水喪失が何を意味するのか。安全性にお墨付きを与えてきた班目は、知りすぎていた。 「なんとしても燃料棒を冷やしてください。炉内の圧力を下げるための排気(ベント)も必要です」 班目は本部長の首相、菅直人に繰り返し具申する。 2号機の注水停止は、やがて混乱と錯綜(さくそう)による誤報と判明する。だが1号機では班目の頭をよぎったシナリオが進行しつつあった。 時計の針を少し戻す。地震からほぼ1時間後