第1回 棋士の思考 将棋棋士 野月 浩貴 七段 理化学研究所、富士通、日本将棋連盟による、「将棋における脳内活動の探索研究」に被験者として携わらせていただいて、もう数年になる。 テーマは主に、直観思考についてだが、この実験に参加するまで、直観という言葉はあまり耳にしたことがなかった。 棋士にとって「ちょっかん」と言えば、真っ先に「直感」の文字が頭に浮かぶ。 棋士の直感とは第1感とも言い、将棋の局面を見たときに、今まで修行から身に付いた記憶や経験で浮かぶ手のことを指す。 1手しか浮かばないこともあれば、2~3手浮かぶこともある。この第1感を精査して、正しい手を導いていくのが、「読み」と言われる作業となる。第1感と読みの連続により、先の先まで局面を頭の中で進めていくのだ。 瞬間的な判断により行われる直感だが、実験のテーマである直観とは微妙に違う。 自分が実験で良く行うのは、fMRIと呼ばれる、