中東・レバノンの首都、ベイルート。15年間の内戦の爪痕が残るこの地に“レバノンのバンクシー”の異名をとるアーティストがいる。彼の場合、本名も顔も知れ渡ってはいるが。 Yazan Halwani(ヤザン・ハルワニ)、23歳。内戦で崩壊した街に「文化の風」を吹き込み、活気を取り戻そうと、グラフィティを施していく。 政治で分断された街と文化 レバノンという国は特異だ。北から東にかけてシリアに、南にイスラエルに隣接、西は地中海に面する人口約400万人の小国で、古くからキリスト教徒とイスラム教徒のさまざまな宗派が共存するため「モザイク国家」と呼ばれている。 第二次世界大戦中の1943年、当時統治していたフランスから独立を果たすも、75年から90年にわたって国内のキリスト教徒とイスラム教徒・パレスチナ人の連合勢力との間で内戦が続き、以後は 大統領:マロン派キリスト教徒 首相:スンニ派イスラム教徒 国会