昔話というのは、だいたいにおいて細かい描写というのをしないようです。 たとえば、お姫様が登場するとする。 もしも、小説なら(まあ、そんな小説があったとしたらの話しですが)、 「ロココ調のレースのあしらいも花飾りもない、まったくシンプルなドレスでしたが、その白さは、彼女の抜けるような肌の白さと、そして黒い髪とバラ色の唇をいっそう引き立てて……」 などと描写するかもしれません。 が、昔話では、たとえば、 「今まで見たこともないような美しいお姫様が立っていました」 としか言いません。 具体的には語られないために、聞き手は各々自分の心の中に想像を思い浮かべることになります。 ある人は、ほっそり型の女性を思い浮かべ、ある人は、ぽっちゃり型の女性を思い浮かべる。 ある人は、オードリー・ヘプバーンを思い浮かべ、ある人は、山田花子さんを思い浮かべる。 どんな服を着て、どんな肌をして、どんな姿形をしているか