宮城県の古刹・通大寺では、人間に「憑依」した死者を成仏させる「除霊」の儀式が、今もひっそりと行われている。震災後、30名を超える霊に憑かれた20代の女性・高村英さんと、その魂を死者が行くべき場所に送った金田諦應住職。彼女の憑依体験から除霊の儀式まで、一部始終を取材した大宅賞作家・奥野修司氏が、このたび単行本『死者の告白 30人に憑依された女性の記録』を上梓した。今回は、高村さんの「憑依」体験の一つを紹介する。 兵隊の「除霊」が終わると、また次の霊が…… 高村さんはといえば、読経が終わった頃からすでに体に異変が起きていた。下半身がない兵隊が彼女の体から出て行ったのと入れ替わるようにして、別の霊が彼女の体に侵入しようとしていたのだ。憑依されて体を乗っ取られないようにと必死に抵抗していたが、もう無理だとわかると、金田住職に向かって「次の人が出てきます!」と叫んだ。 儀式が終わったのだから帰るもの