マーケティング用語である「キャズムセオリー」や「キャズム」。この連載の読者の中にはこれらの言葉を熟知されている方も多いと思う。今回はベンチャー企業が必ず直面するキャズムと、それを超える試みについて、ベンチャーキャピタリストの視点からあらためてお話ししたい。 キャズム(chasm)とは、隔絶・溝を意味する言葉である。ベンチャーの世界において、この言葉は技術ベースの製品やサービスを市場で「成功」させるため、すなわち対象市場を独占するためにどうしても超えなければいけない一線を指す。米国シリコンバレーの老舗コンサルティング・ファーム、McKenna GroupのパートナーであったGeoffrey Moore氏が、独立した後の1998年に「Crossing the Chasm」という題名で出版し、一般に広まった理論である。 元来は技術ベースの製品・サービスを対象としているが、コンセプトそのものは技術