「同じ年に生まれて」という、大江健三郎と小澤征爾の対談集を読んだ。 この二人は1935年という同じ年に生まれた。自分の信じる道を進んで、 世界から認められる生き方をしてきた。その二人が胸襟を開いて話している。 たいへん刺激的で面白かった。いくつも記事がかけてしまうくらいだ。 その中で、焦点を絞って記しておこう。 先ず、出だしが素晴らしい。 まえがきを大江が書いている。その部分も対談を紹介しているのだが、 大江健三郎が、「同じショパンでもルビンシュタインのより、ディヌ・リパッティの 最後のリサイタルのレコードに感動する。やはりそれは切実に表れている人間的なものの、 ごく具体的な情念にひきつけられるからだと思う。」というと、小澤もこのように言う。 「ぼく、この間死んだクララ・ハスキルの最後の演奏会をパリで聞いて、それを感じたな。 もちろんキズはあるんだけどね。ほんとにクララ・ハスキルと一緒にい