元旅館経営者の言葉を読み解くことで、ようやく明らかになってきた昭和プロレス史に残る大事件「熊本旅館破壊事件」の真実。“参加者”たちの言葉とは裏腹に、現実とは大きな乖離があったことがわかってきた。最後は、事件の経緯と当事者たちの証言を、元経営者である梅村健児さん(70)と里美さん(64)夫妻にファクトチェックする形で進行してみたい。(全3回の3回目。#1から読む)
観客を驚かせ、喜ばせることを仕事とするプロレスラーは、話を正確に伝えるという意識がそもそも稀薄である。長い間プロレスの取材をしていると分かるが、「酒豪」「エビスコ(大食い)」「トンパチ(非常識、無鉄砲)」「怪力」「セメントの強さ」など、ファンが喜びそうなエピソードは思い切り脚色し、大げさに伝えるのが普通であり、それが良いことだと思っているフシさえある。 この、良くも悪くも「事実を無視して語る」という選手のメンタリティは、本来、取材の大きな障害になるはずなのだが、業界メディアは選手の発言内容を精査したり検証したりすることはあまりない。そのため、プロレス界ではまったく真実とは異なる話が「事実」として語られているケースが珍しくない。昭和プロレス史で屈指のエピソードとなっている「熊本・旅館破壊事件」もその例に漏れない。 その意味で言えば、今回、取材に応じていただいた当時の旅館の主である梅村健児さん
亀は湯の児温泉のシンボル。大きな海亀が傷ついた体を癒しにきたという伝説がある 「あの日のことは忘れんですよ」 そう語るのは、16年ほど前に旅館の経営に区切りをつけ、いまは熊本市内に住む梅村健児さん(70)と里美さん(64)夫妻だ。 「いま思うとですよ。当時、若かった選手の方たちが、プロレスを何とか良くしようとしてね。あんなことが起きたんじゃないかなと思ってます」(里美さん) 選手や関係者によって語り尽くされた感のある旅館破壊事件。だが、「破壊」された旅館側の証言が紹介されたことは、これまでただの一度もない。 いったいあの日、何があったのか――虚飾のない真実が、いま、初めて語られようとしている。(全3回の1回目。#2を読む) 事件発生当時「松の家旅館」の若主人だった梅村健児さんと妻の里美さん ◆◆◆ 件の「旅館破壊事件」とは? 元旅館経営者の回想を紹介する前に、昭和のプロレスファンの間では有
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