前回ご紹介した『硬派銀次郎』や『巨人の星』は、セリフの差し替えだけで済んでいるが、題材やエピソード自体が不適切として、お蔵入りになってしまった作品もある。 有名なところでは、手塚治虫の『ブラック・ジャック』(73~83年)。「指」と題されたエピソードで、ブラック・ジャックの旧友の間久部緑郎という6本指の男が登場する。2人が出会ったのは中学時代。〈わたしもきみもみじめだったなあ/わたしは身体障害者/君は不具者だったんだ〉とは当時を振り返るブラック・ジャックのセリフである。回想シーンでは、アメリカの大学に進学することになった間久部が、医大生となったブラック・ジャックに指の切除手術を依頼。そのときのセリフが〈ぼくはアメリカで五本の指をもったまともな人間として再出発したいんだ!!〉だった。 多指症という実際にある症例らしいが、おそらくこうしたセリフが原因で単行本未収録となっている。確かに、文言だけ