小松左京に鳩啼時計という短編がある。 その中に西条八十のこんな詩がある。一部かな付きなのだが、読みにくいので右にまとめた。 鳩啼時計 鳩啼時計今啼きぬ (はとなきどけい いまなきぬ) 冬の夜ふけの十一時 凩さむき戸外には (こがらしさむき そともには) 利鎌のごとき月冴えて(とがまのごとき つきさえて) 過ぎし日君と一つづつ 銀座の街に購へる (ぎんざのまちに あがなえる) 鳩啼時計いま啼けば うれいは深しわが心 昔恋しきシャンデリア 運命は恋を割きたれど(さだめはこいを さきたれど) 心は常に君と住む 鳩啼時計かうかうと 冬の夜空を呼びかわす 初めてこの本を読んだとき、妙に感じるところがあって、始めの8行はその場で覚えてしまった。もう25年も前の話だ。 鳩時計の音を「かうかうと呼びかわす」と表現したのにも驚く。 冬の夜ふけの十一時では、太陽は地球の裏側にある。利鎌のごとき月は見える