彼岸なので父の墓参りに行こうと思い、線香とライターを持って部屋を出た。父が亡くなってからかなりの歳月が経った。大学に入ったばかりの僕はオッサンになり、高校生だった弟は父親になった。まめに墓参りには行っているので、あらためて父に話すことなんて、ない。墓前で家族の現状を、ただ伝えるだけだ。 父の墓は鎌倉にある。幼いころ、父と過ごした町だ。江ノ電がトコトコ走っている古い町だ。江ノ電は藤沢から鎌倉を結ぶ私鉄で、町のなかをぬうように走っている小さい路線だ。僕は、かなりあやふやになってしまった70年代の記憶が蘇るのではないかと、父の墓に行くときは江ノ電を使う。車窓から鎌倉の町を眺める。今日もそうだ。 江ノ島。鎌倉高校前。海岸と町並みの連続を眺めていると、極楽寺駅手前の車庫に人だかりが出来てるのを見つけた。人の山はじっとして動かない。気になったので、極楽寺駅で降り、さっき見つけた場所に向かうと、廃車にな
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