派遣村についての短い記事には驚くほどの反響があり、毎日のように取材が来る。きょうもCSの番組で話したが、気になったのは私が「労働を市場原理にまかせればすべてOK」と主張していると受け取り、「市場原理主義」を批判するパターンが多いことだ。以前の記事でも示唆したように、労働サービスには普通の商品とは違う特性があり、それを無視しては派遣の問題は語れない。 本書のテーマとするsocial capitalは、ベッカーの人的資本が個人を単位としているのに対して、社会的なネットワークが資本としての価値をもつと考える理論である。その典型が日本の企業だ。トヨタがあれだけ高い効率を実現できるのは、従業員が思考様式や行動様式を共有し、命令しなくても自発的に協力するシステムができているからだ。終身雇用は、そうした社会的資本を蓄積する手段だった。 さらに大企業の周辺には下請けネットワークがあり、彼らが雇用のバッ