◇若者の孤独感は時代を超え不変、自分の周り考えれば世界に通じる 作家の村上春樹さんが2月、イスラエルの文学賞「エルサレム賞」を受賞した際の記念講演「壁と卵」は大きな反響を呼んだ。イスラエル軍のガザ攻撃に対する「批判的な見解」を含む内容だったためだが、そこには「システムと個人の魂の相克」という新作『1Q84』と共通するテーマがあった。 ☆創作は宗教的行為 講演で村上さんは、浄土宗の僧侶で昨夏亡くなった父親が、先の戦争の死者にささげた祈りの姿に言及した。宗教に寄せる作家の深い関心と、生い立ちとの関係について、次のように答えてくれた。「父親の実家が京都の寺院だったから、よくそこに行っていたし、そういう環境、(寺院の)においや音、風景は体に染みついているけど、どうでしょうね。それはあくまで自然なことだったから、僕には分からない。特に何かを強制されたわけでもないし」 「僕にとって書くことは自分の魂と