広島市で8月6日に営まれる原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)をめぐり、出席予定の菅直人首相が「脱原発」の政治パフォーマンスに利用しようとしているのではないかとの疑念が被爆者から上がっている。東京電力福島第1原発事故以降、原子力発電の是非をめぐり国民の議論がかつてない高まりを見せているが、多くの広島市民にとって「8・6」は原爆で亡くなった肉親や友人らに思いをはせる日。被爆者の一人は「静かに祈らせてほしい」と訴えている。静かに祈る日 広島県海田町の田平福恵さん(85)と長男の康博さん(60)親子にとって、8月6日は昔から静かに原爆犠牲者の冥福を祈る日だ。 福恵さんが被爆したのは19歳。現在の広島市佐伯区に疎開していた妹を訪ねた翌朝、閃光(せんこう)を見た。 自宅に帰るため市内に入ろうとして、逃げ惑う多くの人々とすれ違った。電車の鉄橋を渡り、対岸まであと少しの場所で座り込んでいる男の子