「捜査本部」の張り紙が貼られた会議室の中に、ずらりと並ぶ捜査員たち。捜査をめぐって白熱する議論、上司と部下の対立。そんなシーンを刑事ドラマや小説で目にした人も多いだろう。では、現実の捜査本部はどうなっているのだろうか。警察官僚・警視庁刑事としての経歴をもつ澤井康生弁護士に、その実態や自身の体験談を聞いた。(取材・構成/具志堅浩二) ●キャリア官僚とのバトルはありえない 特別捜査本部が設置されるのは、殺人や強盗傷害、放火など、重大で凶悪な事件が発生したときだ。「被疑者の早期検挙・治安維持に向け、戦力を集中的に投入するために発足します」と澤井さんは語る。重大で凶悪な事件ではない場合でも、複数の地域で連続して窃盗が発生したときなどは共同捜査本部というものが設置されることもあるという。 捜査本部は、原則として、事件が起きた土地を所轄する警察署の中に置かれる。事件にもよるが、メンバーはだいたい30~