読書は昔から大好きな私だが、「読み始めたらやめられなくなる」ほど面白い本に出会うことはまれである。久しぶりにそんな出合いを与えてくれたのが、この「フェルマーの最終定理」。日本からの飛行機の中で一気読みをしてしまった。 「フェルマーの最終定理がついに解けた」との最初の報道は良く覚えているが、その後しばらくして、「証明に欠陥が見つかったらしい」、「やはり解けたらしい」などの報道も眼にしていたので、結局どうなったのかを一度ちゃんと理解しておきたいと思い、この本を手に取ったのだ。 すばらしいのは作者(サイモンシン)のノンフィクション作家としての力量。常人には到底理解できないところまで進化してしまった数論を駆使して解決された「フェルマーの最終定理」にまつわる人間ドラマを、そのエッセンスを失うことなく、万人が楽しめる形のドキュメンタリー小説にまとめた力量にはただただ脱帽である。