福島原発事故後、放射線と甲状腺の病気との関連性が話題となっています。チェルノブイリ原発事故において、事故後、甲状腺がんによって死亡する事例があったためです。これについて、専門家として解説いたします。 甲状腺は、頸部にある小臓器です。海藻など※1の食べ物に含まれているヨウ素を材料にして、「甲状腺ホルモン」を合成しています。甲状腺ホルモンには、新陳代謝を促進する作用があり、胎児の発育や子どもの成長を促します。一度に体内に取り込むことができるヨウ素の総量は決まっていて、過剰なヨウ素は尿の中に排出されます。体内では、血液中の甲状腺ホルモンが常に一定の値を維持できるような仕組みが働いています。 余談ですが、甲状腺の病気の治療に使われている甲状腺ホルモン剤は、普段からわが国で約60万人が服用しており、日本ではほとんどがいわき市(福島県)にある工場で製造されていました。工場が大震災に被災したため甲状腺ホ