「こちらの味方がスネオだけというのは厳しいな……」 背後を警戒しながらドラえもんは走る。足の遅いのび太だ、追いつかれることはないだろう。しかしながら、狭いこの街にいる以上いつ捕捉されるとも分からない。安穏としている暇はないのだ。一刻も早く窮余の一策を考えねばならない。 「やはり”ヤツ”の助力が必要か」 街を駆けながら、少しずつ頭の中で考えをまとめていく。のび太がジャイアンという『武力』を用意するならば、こちらは『知力』で対抗すればよい。知力――それも圧倒的な明晰さを誇る頭脳で以て。 走りを止めたドラえもんは、一軒の家に設えられた門扉を見上げる。庭は小奇麗に手入れされていて、その整然とした様はその家に住む者たちの気質を雄弁に物語っているようでもあった。 『出木杉』 この街が誇る一番の頭脳、おそらくヤツを引き込めるかどうかが大局を決する――ドラえもんは確信を持ってチャイムを押した。 ・・・ 「