作家アーサー・C.クラーク(Arthur Charles Clarke, 1917-)はH.G.ウェルズ(Herbert George Wells, 1866-1946)の名作『宇宙戦争』(The War of the World)(1898)に寄せた序文で、物語の結末を明かしながら「本書の結末を明かしてしまったが、このくらいで読者の皆さんの楽しみが損なわれることはないはずだ」と言っている(だからまだ読んだことがなく、結末を先に知りたくない向きは、彼の魅力的な前書きをあとまわしにしたほうがよいかもしれない)。 なにがそうさせているのか詳らかにする準備はないけれど、小説『宇宙戦争』について言えば、それはおそらく主人公の哲学者が報告する状況とその分析の手つきにあるように思う。彼はこの小説の中で語り手のポジションを与えられている。 小説の冒頭はこんなふうに彼の回想から始まる。 十九世紀末、よもや
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