アメリカ版『GQ』に掲載された戦慄のルポをご紹介。ノルウェー国内において第2次世界大戦以降最悪の惨事とされた事件を、“77人”にカウントされなかった者たちが語る。 「ヤツがこっちに来てる? ホントに? マジかよ、ホントに来てるみたいだ」。それがこの記事のタイトルだ。いささか緊張感に欠けた翻訳で恐縮千万だが、これを読む際はぜひ歯がかみあわない感じで、がたがた震えながら読んでいただきたい。 「ヤツ」というのは、アンネシュ・ブレイビク。名前を聞いてわからなければ、昨年のノルウェーにおける乱射事件の犯人と言えばわかるだろうか。この記事は、辛うじて惨事をサバイブした人びとの証言を丹念に拾い集めて、事件を再構成したものだ。冒頭の台詞は、水辺の岩場に隠れて難を逃れた青年とともにいた子どもたちが発したものだった。 記事はオスロ政府庁舎の爆発にはじまり、ノルウェー労働党青年部の集会が行われていたウトヤ島