仁川駅は思いのほか小さかった。この駅の最寄りに中央競馬の主要四場の一つがあるとは思えなかった。競馬場周辺の独特の空気がなかった。 しかし、競馬場はそこにあったのだから仕方がない。到着時にちょうど一レースの直線。仕込んでおいた馬券は負けた。おれはパドックに行く。 特徴的な屋根。 しかし、サラブレッドはどこでも美しい。この馬など、いかにもオルフェーヴルの子供という感じがするではないか。 世界のどの競馬場もつながっている。 馬がいて、騎手がいる。それを見ている数えきれない人生の敗者、そして一握りの勝者がいる。 ミルコ・デムーロがいる。うそだ。この日、ミルコ・デムーロは香港にいた。 パドックから建物をくぐり抜けるとそこにコース。なんとはなしに大井競馬場を思い出す。もっとも、おれが競馬場に出向いたのはいつ以来だろうか? とくに、中央競馬など、それこそオルフェーヴルの東京優駿以来ではないか? そんなこ
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