2008.03.03 大江健三郎v.s.伊集院光2 (15) カテゴリ:その他 泥棒の背中を洗う警官、その警官の背中を洗う女店員。ここには物語を、文体を立体的にする複数の視点が存在している。その伊丹の視点に大江は共感する。そのことばは伊丹を深く励ましたであろうと思う。伊集院が静かに語りはじめる。 「伊丹さんにはよく意味のわからないNGと、よく意味のわからないおっけーがあったんです。なぜ今のがだめなのか、なぜ今のがいいのか、やってるこっちにはよくわからない。でも役者はとにかく淡々と何度でも繰り返し演じるしかない。でも、あのシーンでは最初の出前持ちをからかうシーン、最後の背中を洗うシーン、あれはとにかく延々と繰り返し演技させられたのを覚えています。伊丹さんはその大江さんのことばを聞いて、きっと「報われた」と思ったと思いますよ」 ひとつの物語を複数個の視点から立体的に浮かび上がらせる。大江はこの