ジェリーが大人になった頃トムはもうこの世にいませんでした。 トムは自分の命の終わりがすぐ傍まで来ているのを知ったとき、こっそりジェリーの前から姿を消しました。ジェリーの前で弱って涙もろくなった自分を見せたくなかったのです。トムはジェリーの心の中ではずっと喧嘩相手として生きつづけたかったのです。 トムがいなくなったのに気づいたときジェリーは悲しみはしませんでしたが、退屈になるなと思いました。トムとの喧嘩は最高にスリルのあるゲームでしたから。胸の奥が不思議にチクチクはするのですが、それが何なのか、ジェリーにはよくはわかりませんでした。トムの願い通り、ジェリーの心の中でトムはいつまでも仲の悪い喧嘩相手でした。 そんなある日ジェリーの前に一匹の猫が現れました。トムよりのろまで体も小さい猫です。喧嘩相手のトムがいなくなって寂しかったジェリーは、今度はこの猫を喧嘩相手にしようと考えました。そこで