中耳は人体に備わった一種の精巧な音響装置であり,空気中の音響振動を効率よく体内に取り入れる役割を果たしています.しかし、中耳は、外耳道の奥にあり直接観察することが難しいため,その振動様式はまだ十分に解明されていません. そこで,ヒトの側頭骨標本の形状を測定し,コンピューターにより3次元再構築したデータ(図1)を基に,有限要素法(FEM)により中耳モデル(図2)を作成し、振動解析を行っています. 図3および図4は、それぞれ0.5 kHz, 2.0 kHzにおける中耳の振動の様子の解析結果を示しています.周波数により,鼓膜の位相や振幅が異なっていることがわかります。図5および図6は,下方から見た耳小骨振動の様子です.0.5 kHzでは,耳小骨は前ツチ骨靱帯と後キヌタ骨靱帯を軸として振動しますが、2 kHzでは、軸自体も振動していることが分かります. この様に,振動の様子を解析するこ