情報が日々更新され、対応に追われる新型コロナウイルス禍。厚生労働省のクラスター(感染集団)対策班の押谷仁・東北大教授(ウイルス学)が今後の対策方針を示した資料が「非常にわかりやすい」「当面は行動を変えよう」とSNS上で反響を読んでいる。 押谷氏はJ-CASTニュースの取材に、感染拡大を防ぐためには「全世代」で当事者意識を持つべきだと話す。 爆発的感染以前に「医療崩壊」の懸念も 押谷氏は2020年3月29日、新型コロナの拡大防止に向けたこれまでの取り組みと今後の方針を整理した資料「COVID-19への対策の概念」の暫定版を公開した。主な内容は次の通り(※J-CASTニュース編集部で、4月1日までにわかった情報を補足しています)。 2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)では、ほぼすべての感染者が重症化したため、すべての感染連鎖を見つけて断ち切ることで封じ込めに成功した。 一方、新型コロナ
2020年02月22日 Topics 新型コロナウイルスに我々はどう対峙すべきなのか(No.4)想像する力を武器に 医学系研究科微生物学分野 教授 押谷 仁 この文章を書いている2月21日は、2003年のSARSの国際的な流行にとって非常に重要な日であった。ちょうど17年前のこの日に広東省広州で患者から感染した医師が香港のホテルに滞在していた。その1人の感染者からこのホテルの9階に滞在していた宿泊客の多くが感染しており、これらの人たちが体内にウイルスを保持したまま、ハノイ・シンガポール・トロントなどに移動することでグローバルな流行となった。このホテルでのたった1つの感染拡大がなければ、SARSのグローバルな流行は起きなかったかもしれないと考えられている。 それから17年後の今、我々は17年前よりもはるかに難しい問題に直面している。今回のウイルスの病原性は17年前のウイルスよりもはるかに低い
2020年02月15日 Topics 新型コロナウイルスに我々はどう対峙すべきなのか(No.3) 新たなフェーズに入った日本での対応はどうあるべきなのか 医学系研究科 微生物学分野 押谷 仁 教授 世界保健機関(WHO)は、今回の新型コロナウイルスのような感染症の危機管理に対応する基本戦略としてリスクアセスメントに基づくリスクマネジメントを行うことを強く推奨している。このように実際に進行中の危機に対するリスクアセスメントの方法は十分に確立していないが、私は、1)最良のシナリオ(Best-case Scenario)、2)もっとも起こりそうなシナリオ(Most Likely Scenario)、3) 最悪のシナリオ(Worst-case Scenario)、の3つのシナリオを考えていくことが有用だと考えている。 今回の流行の日本でのリスクアセスメントでは、1)は「国内流行が起きない」、2)は
2020年02月12日 Topics 新型コロナウイルスに我々はどう対峙したらいいのか(No.2) 新たな段階に入っている新型コロナウイルスと人類の戦い 医学系研究科 微生物学分野 押谷 仁 教授 日本ではこの1週間新型コロナウイルスの話題はクルーズ船の話でもちきりだった印象がある。ウイルスは「見えない」存在である。今回のコロナウイルスも直径100-200ナノメートルという小さな粒子であり、肉眼ではもちろん普通の光学顕微鏡でも見ることができず、ウイルス粒子を見るためには電子顕微鏡が必要である。今回の新型コロナウイルスはウイルス粒子が見えないということと同時に、このウイルスの拡がりが見えないという特徴があり、そのことがこのウイルスとの戦いを難しいものにしている。 クルーズ船の乗客から重症者が発生したということが今日厚生労働省から発表された。クルーズ船の乗客では高齢者が多かったこと、SARSで
2020年02月04日 Topics 新型コロナウイルスに我々はどう対峙すべきなのか(押谷仁教授メッセージ) 医学系研究科 微生物学分野 押谷 仁 教授 中国で出現した新しいコロナウイルス(2019-nCoV)の感染拡大が止まらない。徐々にこのウイルスの実態が明らかになってきている。まだわからないことも多く残されているが、これまでわかっていることからこのウイルスに対し日本や国際社会はどう対応したらいいのかを考えてみたい。 まず、原因ウイルスは中国の科学者によりいち早く同定され、遺伝子配列も公開されている。その結果、2003年に世界的流行を起こしたSARSコロナウイルス(SARS-CoV)と近縁のウイルスであることがわかっている。しかし、ウイルス学的に近縁のウイルスであることは疫学的特徴が同じということを意味するわけではない。むしろ疫学的には大きな違いが見えてきている。 2002年の11月に
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