東京藝術大学 大学美術館准教授 古田亮 「美術ハ国ノ精華ナリ」 これは、明治時代、美術の研究や保護に大きな足跡を残した岡倉天心の言葉です。 昨年は、生誕150年、歿後100年という節目の年にあたり、関連書籍の出版、展覧会やシンポジウムの開催など、その存在がクローズアップされました。また、今年は岡倉の創設した日本美術院が再スタートしてから100年にあたることから、「世紀の日本画」と題した大規模な展覧会も今月末に開催予定です。この機会に、岡倉天心について考え、私たちが未来の美術をつくっていくためのヒントにしたいと思います。 では、岡倉天心という人物をどのようにとらえればよいのでしょうか。その生涯を振り返りながら、考えてみたいと思います。 数え年19歳で東京大学を卒業した岡倉は、文部省に就職します。そして、文部少輔だった九鬼隆一のもとで美術の奨励に奔走することになります。九鬼と岡倉はアメ