「八日目の蝉」「紙の月」などで知られる作家角田光代氏(48)は早大文学部在学中に、忌野清志郎さん(享年58)に魂を打ち抜かれた。RCサクセションが76年に発表した「やさしさ」を聴いて、その後、使えなくなった言葉があった。 角田 「優しい」という言葉の偽善性を指摘されていました。小さな染みのように付いてるウソくささ。誰もが簡単に使う分、裏にずるさも潜む感じ。それに気づかされ、小説で使うのを諦めて、代わりに「親切」「人当たりが良い」という表現にしていました。最近、とらわれすぎていたかなと思えてようやく使えるようになりました。 エッセー「これからはあるくのだ」でも触れた名曲「スローバラード」を例に出した。 角田 「市営グラウンド」「駐車場」「毛布」といった日常の言葉って全然かっこよくなくて、文字面だけなら1つも憧れない。それが清志郎の悲しみを感じさせる歌声で聴くと全てが光り出す。すごくリアルでロ