本作についての感想を書く前に、まず自分のアーバンギャルド論について書いてみたい。 アーバンギャルドは「トラウマテクノポップ」を自称しているが、テクノポップというジャンルで語ることができない音楽性だ。雑多な情報が音に詰め込まれて、ジャンル分けしにくい。 サウンドの中で目立っているのはシンセ。チップチューンを意識した高音域のシンセが音の隙間を埋め尽くすピーキーな音作りで、ボトムが薄く、フィジカルな感覚が希薄だ。そのため、赤や白などの原色を多く用いるどぎついアートワークやアーティスト写真と親和性がある。妄想をシンセの音色で表現する観念的な音楽であるため、アーバンギャルドを聴いても踊れず、自分の霊体をその場に立ち止まらせるだけだ。アーバンギャルドの前では肉体は消滅する。アーバンギャルドは、血が飛び交い、生きるか死ぬかの辛辣なリアルを、軽やかでファンタジックなリアルに昇華する。 一瞬のスキもない騒が
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