【オトナの童話】美味しいハムの育ち方 豚小屋が不満で一杯だった。 代表の豚が叫んだ。 「俺たちはハムになるために生まれてきたわけじゃねえブー」 がさつな飼育員が怒鳴った。 「お前ら、分かりもしないくせに生意気言うんじゃねえ。 美味しいハムになるのがどんなに難しいか!知りもしねえで、ワガママばっかり抜かしてんじゃねえ!」 豚は口々に叫んだ 「ふざけるなブーふざけるなブー」 その不満の声に、豚小屋のオーナーがやってきた。 白髪のオーナーは大柄で、落ち着いた声で喋る人だった。人格者とのもっぱらの評判だった。その雰囲気に静まり返った豚たちの前でオーナーはゆっくりと諭すように話し始めた。 「君たち、この豚小屋が何で成り立っているか、知っているかい?先代の豚たちが、立派なハムになってくれて、市場に出る。その売り上げがあるから、この屋根のある清潔な豚小屋も、君たちの美味しい餌代も賄われているん