まんがを描く、彫刻を作る、演劇の脚本を書く、バンドで演奏する楽曲を作る──あらゆる表現行為においてもっともむずかしいのは、しだいに「自分がいったい何をやっているのかよくわからなくなってくる」ことに尽きるのではないだろうか? 作業の手を止めて、表現者はふと考える。このまんがのどこがおもしろいのか。こんな彫刻を作って、実際に見る人はいるのか。このように恥ずかしい脚本を書いて笑われはしないだろうか。私が作っているこの曲は、実はとてつもなくカッコ悪いのではないか……。こうした疑念や不安、無力感はあっという間に表現者に忍び寄り、大いなる意欲と表現衝動につき動かされて開始したはずの創作は、いともかんたんに挫折してしまう。 なんらかの表現をほんの少しでも経験したことがあれば、創作につきまとうこうした不安は理解可能なのではないだろうか。まわりの人はもっとスマートにうまくできている、こんなおかしなやり方をし
![『アート・スピリット』/ロバート・ヘンライ(国書刊行会) - 空中キャンプ](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/37bf14d476ba2415e9be8064d99c4c198a3ec24f/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Fcdn-ak.f.st-hatena.com%2Fimages%2Ffotolife%2Fz%2Fzoot32%2F20110919%2F20110919192219.jpg)