メジャーの慣れない芝に対しても、菊池は「楽しむことを忘れないでプレーしたいですね」と前向きに発言していた。 ミスしてなお異才が際立つ。名手とはそういうものなのか。まだ脳裏に生々しい熱狂を呼び起こす。 日本時間3月22日、WBC準決勝。息苦しいほどの均衡が破れたのは4回1死、アメリカの3番打者イエリッチの打球を二塁手・菊池涼介が弾いたことがきっかけだった。二塁まで進まれ、最後は2死一、二塁からこの走者がタイムリーで先制のホームを踏んだ。 誰もが諦める打球をそのグラブに収めてきた男が正面の打球を取り損なった。 「悪い流れを作ってしまった。1つのミスが取り返しのつかないことになってしまった」 雨に濡れて滑りやすい芝、硬いアンツーカー。本人は多くを説明しなかったが、理由は容易に推察できる。そして、その落胆ぶりも……。 ただ、今大会で本誌『Number』の解説を担当した宮本慎也氏はこれが菊池だからこ