うだるような暑さの6月の午後、バージニア州の港町ハンプトンの海岸通りに群衆が集まっていた。人々が取り囲む中に即席の手術台が置かれている。18世紀のボロ着に身を包んだ哀れな海賊がこれから足を切断されるところだった。 4人の屈強な男たちに押さえつけられ、叫び声を上げて身もだえする。楽しそうに見つめる観客たち。やがて負傷した足が切り落とされると、代わりに木製の義足が縛り付けられた。突然、芝の向こうから堂々と歩いてきた大男に観衆の目が釘付けになった。血の色のサッシュを腰に巻き荒々しい黒いあごひげを生やしている。男の腫れぼったい目は乳母車を押す若い母親の上で止まった。片方の毛深い眉が釣り上がる。「いい女がいるじゃねぇか」。怒鳴り声が砲声のようにとどろいた。「ガキの方も悪くねぇな」。 今年もまた「黒ひげ」が祭りの主役として帰ってきた。ハンプトンで毎年開かれる「黒ひげ海賊祭」は模擬戦や剣術の演技、風