野心的な著作である。本書は「代議制民主主義」というテーマを通じて、比較政治学、政治思想史、政治経済学、現代日本政治論の研究成果を広く渉猟し、長期的な視野でその未来を展望する。論旨は明快だが、読者にも相応の覚悟と一定の知識を要求する1冊である。 通常、代議制民主主義を論じる書物は、現代において政治家や政党が民意に十分に応えることができずにいるため、民主主義に対する有権者の不満が高まっている……というような語り口で始まる。その後、直接民主主義と代議制民主主義の関係、議院内閣制と大統領制の比較などを論じ、最後は選挙や政党のあり方についての改革の展望で締めくくられる、というのが一般的であろう。 本書もまた、その王道をはずしていない。とはいえ、この本において圧巻であるのは、それを論じるために著者が示す長期的な座標軸の存在である。本書はまず、自由主義と民主主義の緊張関係という近代政治思想をめぐる根本問