現代人にとって、動物園やテレビで見慣れた動物である象。浮世絵にもしばしば登場するのですが、本来、象は日本には生息しない動物です。今回は江戸から明治にかけて象を描いた浮世絵をご紹介しながら、当時の人々にとって未知の動物である象が、どのような存在であったかも見ていきたいと思います。 北尾重政「江口の君図」寛政1~10年(1789~98)頃 絹本着色 一幅 太田記念美術館蔵白い象に乗るのは、謡曲『江口』で知られる遊女。『江口』は、西行法師が摂津国の江口で遊女と歌問答を行ったことや、遊女が普賢菩薩として現れた説話などがもととなったとされ、終盤、遊女の霊が普賢菩薩となり、乗っていた舟が白象と化して西の空に去るというものです。 女性の柔和な顔立ちには気品も漂います。なお、垂髪に何本も簪を挿す髪型や、帯を前に結ぶ着こなしは江戸時代の遊女独特のもの。 象には立派な牙が生え、目は細く弓なりの形をしています。
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