「言葉が足りない」――今年9月、落合の今季限りでの退任が発表された。7年間で4度も優勝した監督がなぜ、事実上の解雇となったのか。その原因としてよく指摘されたのがこの部分だった。采配や、故障情報など内部情報をメディアや球団に説明することはほとんどない。それが内外からの批判につながったというのだ。 だが、落合はじつは雄弁家だ。今でも価値観を共有する野球人との話は夜を徹して続くことがある。言葉が足りないのではない。意図的に黙しているのだ。今シーズン、試合後の3秒会見が話題になった。「動けているから、いいんじゃないか」。日々、ひと言だけ残して去っていく。その理由をこう話していた。「オレがなんか言ったら言葉尻だけとらえられて、書かれる。だったら、何も言わない方がいいじゃないか。オレの言葉を理解するやつは何人かいるかもしれない。でも、理解しないやつの方が多いんだ。昔から散々、そういう目に遭ってきたから